●マイクロフォンの種類と録音結果
マイクロフォンには、概ね3種類の動作方式があることは他のコンテンツでも触れましたが、実際どうなのか、感じているところを記してみます。
同じ音を同じ条件で、ダイナミック型、エレクトレットコンデンサー型、DCバイアス式コンデンサー型の3種類のマイクを使って、理想的に録音するとします。
下の図表はオーバーに表記していますが、私なりに多種類のマイクを使ってみて得られた平均的な感触を反映しています。
まず真ん中のグラフはマイクの出力と考えてください。ダイナミック型は小さく、エレクトリックコンデンサー型は比してやや大きく、DCバイアス式コンデンサー型はグンと大きくなっています。
それぞれのマイク出力について、音の一番大きな部分が録音可能な最大レベルになるよう録音レベルを調節するとします。
ボリュームフェーダーの絵の通り、出力の低いダイナミック型、エレクトレットコンデンサー型では録音ボリュームを高く設定して、最大レベルに達するようにします。出力の大きなDCバイアス式コンデンサー型では録音レベルをさほど上げることなく、信号は最大レベルに達します。
いずれの場合も録音レベル調整の結果、信号は同じレベルに引き上げられますが、ダイナミックマイクの場合、アンプのノイズが加わって結果として低レベルの音声が雑音に埋もれてしまいます。エレクトレットコンデンサー型マイクは、ダイナミック型に比べ心持ちましかなという程度です。
DCバイアス式コンデンサー型は、もともと出力が大きいため、アンプの増幅率も低く、アンプのノイズが付加される度合いも少ないため、結果としてクリヤーに録音されます。
余談ですが、人気ユーチューバーの瀬戸弘司氏が、マイクに関する非常に興味深い動画を多数アップロードしています。氏は評判の良いマイク(エレクトレットコンデンサー型)を次々試すも飽き足らず、最終的にはDCバイアス式コンデンサー型(SENNHEISER/MKE600)に至り、マイク遍歴を一旦終止しました。
●ハイグレードのマイクロフォン
生録の手法上、マイクのポジションと録音レベルを最適にしたならば、あと最終的に録音物の音質の優劣を握るアイテムはマイクロフォン自体です。デジタルレコーダーと高品位のマイクロフォンの性能が発揮できれば、場の雰囲気や空気感(気配?)までも収録された、素晴らしい臨場感・緊張感のある音が録れる可能性があります。
その「雰囲気や空気感」は、部屋・建物内部の響きやその音色・減衰の様子。またバックグラウンドノイズと呼ばれる、録音対象の背景にある極めて低レベルの雑音、その他諸々の微細な(雑)音の総合したものと言えます。録音の現場では目的とする録音対象に注意が向いていて気が付かなかったような音~が、まさにその雰囲気・空気感を作っています。
そうした極めて微細な音は、高感度高出力のいわゆるDCバイアス式コンデンサー型のマイクによって収録可能なものといってよいと思います。
音楽であれ自然音であれ、そこにある「音」を「物理的にキャッチ」する、録音の本質的なキーアイテムはマイクです。どんなに高性能のレコーダーを用意しても、音の入り口のマイクが捉えなかった音は録音できません。
私自身もDCバイアス式コンデンサー型のマイクを使ってみて、それまで使ってきたエレクトレットコンデンサー型マイクやダイナミック型マイクとはまるで世界の違う、ユラっとくる空気感を伴った低音域、濃密な中高音域、シィーンと伸びる高音に魅了され、以降録音することがますます楽しくなりました。
マイクの性能の差は、条件によってはわかり難いこともあります。しかしより高品位の再生装置・静かな環境で再生すれば、差は歴然です。
1万円しないレコーダーと100万円のレコーダーでは、確かに機能や音質の差はあるかもしれませんが、安いエレクトレットコンデンサーマイクと、ある程度のグレードのDCバイアス式コンデンサー型マイクの差に比べれば至って小さな差といえます。
レコーダーに限って言えば、デジタル技術によって機器の価格による音質の差は少なくなくなりました。ある程度の性能を備えていれば、極端な話レコーダーはなんでもいいともいえます。ハイグレード・高出力のマイクロフォンにより、マイクアンプの増幅に依存する度合いが少なくて済むということに着目すれば、ハイグレード・高出力のマイクロフォンは、低価格のレコーダーにこそ有効であるともいえます。
●電池駆動のDCバイアス式コンデンサーマイクを使う
DCバイアス式コンデンサーマイクは多くの場合ファンタム電源といって、レコーダー側からマイクケーブルを通してかけられた電力によって動作しますが、中にはファンタム電源のいらない、内蔵の電池を電源として動作するものがあります。
そうしたマイクロフォンは、事実上エレクトレットコンデンサー型マイクと同じように扱えます。
マイクの仕様・設計によりますが、スペック上電池駆動時と外部=ファンタム電源時で最大音圧レベルが変わるものがあります。基本的には外部=ファンタム電源供給時に、マイクとしてのパフォーマンスは最大に発揮されるよう、設計されています。
電池駆動可能〜中でも、ワンポイントステレオ型のものが以下、
オーディオテクニカ/AT-8022(電池:1.5V単3型1本、出力XLR5ピン)
バランスケーブル, アンバランスケーブル 付属
RODE/NT4(電池:9V角形、出力XLR5ピン)バランスケーブル, アンバランスケーブル 付属
ちなみにバランスケーブルというのはマイク側(XLR-F5PIN)-出力側(XLR-M3PIN)でXLR型入力の機器に接続して使う時に使います。
アンバランスケーブルというのはマイク側(XLR-F5PIN)-出力側(ステレオミニプラグ)で のようなケーブルです。一般的な3.5mmミニフォンジャック入力のレコーダーではこちらを使います。
三研/CMS-7s
一緒に映っている専用電源 CMS-MBBII を使うことにより、バッテリー駆動が可能。(電池:単3電池4本、出力XLR3ピンL/R)
RODE/STEREO VIDEOMIC
製品名はビデオマイクですが、取り付けがカメラ用なだけで、マイクとして変わったところはありません。
(電池:9V角形、出力:3.5mmステレオミニフォンプラグ)
以下に紹介するマイクは(ステレオではないので)2本ペアにしてステレオ収録が可能になります。この種のマイクを一般的な3.5mmステレオミニフォンジャックのレコーダーで使う場合
のようなケーブルを用います。写真は自作品ですが、市販品もあります。
ソニーー/C-38B(電池:9V角形、出力XLR3ピン)
ソニーー/C-48(電池:9V角形、出力XLR3ピン)
RODE/NT3(電池:9V角形、出力XLR3ピン)
AKG/C1000S(電池:単3電池2本、出力XLR3ピン)
RODE/M3(電池:9V角形、出力XLR3ピン)
他に指向性の鋭い、いわゆるショットガンマイクにも、電池駆動できるものがあります。瀬戸弘司氏が動画で紹介しているのが
SENNHEISER/MKE600(電池:1.5V単3型1本、出力XLR3ピン)
カナイさん所有の